室礼とは
室礼とは何でしょうか。
基本的なポイントをおさえつつ、おうちのコーディネートのヒントになる話をしましょう。
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室礼とはなにか
「室礼(しつらい)」はお部屋やテーブルをコーディネートして、日常生活の場を住みやすくしたり、儀式的な空間を演出したりすることです。
わたしたちがふだん、素敵な部屋づくりをしたいと思ってあれこれ考えるのと同じことです。
素敵な部屋づくりには雑誌を読んだりInstagramの写真を見たりして参考にすると思いますが、もともと住んでいた実家のレイアウトや家具を参考にしているのではないでしょうか。
一人暮らしを始めるとき、お母さまが揃えてくれた食器などがあったでしょう。
女性であれば雛人形を持っていきなさいと言われた方もいらっしゃるかもしれません。
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このように、部屋にものを配置することには「家庭内の文化」が大きく影響しています。
そしてここに、親から子への願いが込められているのです。
- 病気にならず健康に生活してほしい
- 幸せだと感じながら生きてほしい
- つらいときも親が遠くから見守っていることを忘れないでほしい
さらに、親が守れないほど悲しい出来事があるときは、ご先祖様や自然のなかに息づく神様に守ってほしいという願いを込めていたのです。
室礼が必要だった時代
科学が発達する以前は、夏の暑さも冬の寒さも、台風で収穫間近の作物がとれなくなってしまうことも、すべて生命の危機に直結する出来事でした。
暑ければ食べ物の腐食が進み食中毒を起こす。
寒ければ凍死する。
作物がとれなければ飢えて、食料がない分だけ人間を減らすような恐ろしいことも当たり前に起きていました。
亡くなる理由が分からないものもたくさんあったでしょう。魔物に襲われたのだと考えることも多かったと思います。
ですから、先祖の残してくれたものに感謝し、自然に畏怖の念を抱き、見えないものを信じて祈ることは人びとの日常に根づいた考えでした。
日々の暮らしの中にその感謝と祈りがあり、家族の健康的な成長を願っていました。
季節の室礼の意味
端午の節句(5月5日)は子どもの成長を願う行事ですが、
旧暦で生活していたころの5月は梅雨の時季と重なり、食中毒で子どもがたくさん亡くなりました。
菖蒲(あやめ)が見頃で、菖蒲湯に入ったり京都の家では今も菖蒲を軒先に吊るした光景が見られたりします。
この菖蒲には、花菖蒲とは種類の違う、殺菌効果のある葉菖蒲が用いられます。これを軒先に吊るすことで、病魔が家に入ってこないようにとお祈りしているのです。
重陽の節句(9月9日)も、古代中国から続く陰陽五行説に基づいていて、陽の気が強い「9」が重なるこの日は不吉であるとして不老長寿に関する様々な行事が行われてきました。
旧暦の9月は菊の花が美しい時季と重なります。中国のある村では菊花の露を含んだ水を飲んでいるからみんな長生きなのだといって、この時季には菊水や菊酒を飲む習慣ができました。
室礼はこうして生まれ、今も続いています。
神様に祈りと感謝をささげるのは、家族の幸せを願うからなのです。
そう考えると、年中行事のテーマを帯びた室礼がより深い意味を持ちます。
一服のお茶をさしあげる相手の幸せを願って、お花を飾り、お菓子を選ぶことができます。
年中行事についての記事はこちらから。
現代に室礼を取り入れる意義
年中行事の「形」を取り入れることは、とても楽しいし大切なことです。
けれど、せっかくお茶を学んだうえで年中行事を取り入れるのですから、意義を理解しておくのがいいですね。
1.毎年恒例、家族とのコミュニケーション
七夕も土用の丑の日も毎年の行事です。またこの時期がきたかと言いながら、家族でそのイベントについて話しましょう。鰻を食べる土用の日って何?から陰陽五行説の話になるなんて、教科書ではなかなか教えてくれません。
2.昔の人、自分の先祖の生活を想像する
お盆はご先祖様をお迎えする行事ですが、地域ごとの風習がバラバラです。ご先祖様が、もっと昔の人たちを偲んで作り上げてきたイベントなのだと想像しましょう。
3.みんなでご飯をつくり、食べる
室礼では神様にお供えしたものをみんなで食べる「直会(なおらい)」が行われます。神様と人間が同じものを食べることで結びつきを強くしようということです。我が家の今年のお月見は、1歳の娘がおだんご作りを手伝ってくれました。おいしくて健康的なものを、大切なひとに食べてほしいという気持ちを表しましょう。
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季節の室礼を取り入れるコツ
1.まずは学ぶこと
年中行事は月ごとにあり、一年を通して室礼を楽しむことができます。けれども人によっては1ヶ月も同じ室礼なんて飽きてしまうでしょうし、逆に普段はお気に入りの絵を飾ってあるから特別な行事のときだけ室礼を変えたいと思うでしょう。アイテムが少ないと感じて、室礼を負担に思うなら本末転倒です。
まずは学ぶこと。大切なひとに、その室礼で何を感じとってほしいか考えると、取り入れるべきものが洗練され深くなっていきます。
2.室礼を盛るには、「三方」をさりげなく
室礼は「飾る」とか「整える」のではなく「盛る」のですが、ひとつあれば場が決まるアイテムがあります。
「三方(さんぽう)」です。鏡餅やお月見などで目にしますね。神様へのお供物を置くものですから神聖で少し使いづらいようにも思いますが、一枚紙を敷いて、お気に入りのオブジェを置けば普段から使えます。
3.お菓子のチカラを借りる
和菓子には「銘(めい)」がつけられます。個性的なデザインにふさわしい名前、古典を題材にした名前など、作り手の心が見える銘は話の弾むきっかけを作ってくれます。
重陽の節句のとき、とらやさんが販売した菊のお菓子は「あるじ草」という銘でした。菊にはたくさんの異名がありますが、大胆なデザインと聞き慣れない名前に季節の情緒や物語を感じることができます。
最近は生菓子を配送してくださるお菓子屋さんも増えてきましたから、ときにはお菓子のチカラを貸してもらうのもおすすめです。
季節を取り入れること、年中行事を取り入れることも、
大切なひとにお茶を差し上げる「心」につながってきます。
おうち茶道のレッスンでは室礼の盛り方を紹介しています。さりげなくコーディネートするコツは、ぜひ体験レッスンをのぞいてみてくださいね。
お問い合わせはこちらから。
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